祖母の形見の三線

今からやく40年前、僕が3歳くらいのときに、祖母が故郷沖縄から持ってきてくれた古い三線がある。
竿は細めで、全体的に小ぶりな感じの三線。
きっと、小さな僕に弾けるようにとのことだったのだろう。
祖母は、その三線を沖縄からひもで肩から下げて持って来てくれたという。
その三線はだいぶ古いものらしく、塗はかなりはげて、勘所も凹みまともに音が出ない。
いったいいつ頃作られた三線なのだろう。
いつも床の間で、ひっそりと仏壇のそばから、これまでやく40年の間、いつも僕ら家族を見守ってくれていた。
祖母は僕が13歳のときに亡くなった。
三線は弾けなかったようだが、親戚たちが集まる場所では、チジュヤーが好きで、よく踊っていたそうだ。
そんな祖母が持ってきてくれた古い三線。
この年末、思い切って沖縄に送って、弾けるように修復してもらった。
竿を修復して塗りなおしてもらい、カラクイと歌口も新しいものにしてもらった。
張ってある皮もだいぶ古く、太鼓のような音なのだが、これはあえてそのままにしてもらった。
そんな古い皮の響きがまた心地よい。
幼いころ、近所の駄菓子屋に僕の手を引いて連れて行ってくれた祖母の手のぬくもりが心によみがえる。
今年の正月はこの三線を妻と奏で、新しい年を迎えた。